消防法による消防設備の設置及び点検義務

火災から国民の命を守るために制定された消防法により、一定の条件を満たす建物に対して消防設備の設置、 定期的な点検・報告が義務づけられています。 消防用設備がいざという時に、その機能を充分に発揮するためには、 設備を「正しく設置」することのほかに設置後の「適正な維持管理」が必要です(消防法第17条)。 消防用設備の設置及び定期点検は、消防設備士又は消防設備点検資格者に点検させなければなりません(消防法第17条3-3)。

第十七条 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない。
○2 市町村は、その地方の気候又は風土の特殊性により、前項の消防用設備等の技術上の基準に関する政令又はこれに基づく命令の規定のみによつては防火の目的を充分に達し難いと認めるときは、条例で、同項の消防用設備等の技術上の基準に関して、当該政令又はこれに基づく命令の規定と異なる規定を設けることができる。
○3 第一項の防火対象物の関係者が、同項の政令若しくはこれに基づく命令又は前項の規定に基づく条例で定める技術上の基準に従つて設置し、及び維持しなければならない消防用設備等に代えて、特殊の消防用設備等その他の設備等(以下「特殊消防用設備等」という。)であつて、当該消防用設備等と同等以上の性能を有し、かつ、当該関係者が総務省令で定めるところにより作成する特殊消防用設備等の設置及び維持に関する計画(以下「設備等設置維持計画」という。)に従つて設置し、及び維持するものとして、総務大臣の認定を受けたものを用いる場合には、当該消防用設備等(それに代えて当該認定を受けた特殊消防用設備等が用いられるものに限る。)については、前二項の規定は、適用しない。
「電子政府の総合窓口e-Govより抜粋」 2020年4月17日現在

第十七条の三の三 第十七条第一項の防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等(第八条の二の二第一項の防火対象物にあつては、消防用設備等又は特殊消防用設備等の機能)について、総務省令で定めるところにより、定期に、当該防火対象物のうち政令で定めるものにあつては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあつては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。
「電子政府の総合窓口e-Govより抜粋」 2020年4月17日現在

点検や報告を怠った場合の罰則

点検結果の報告をせず、又は虚偽の報告をした者には30万円以下の罰金又は拘留が科されます(消防法第44条)。

第四十四条 次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処する。
一 第三条第一項の規定による命令に従わなかった者
二 第四条第一項、第十六条の三の二第二項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第十六条の五第一項若しくは第三十四条第一項(第三十五条の三第二項及び第三十五条の三の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による資料の提出若しくは報告を求められて、資料の提出をせず、虚偽の資料を提出し、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による立入り、検査若しくは収去を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
三 第八条の二の二第三項(第八条の二の三第八項(第三十六条第一項において準用する場合を含む。)並びに第三十六条第一項及び第六項において準用する場合を含む。)又は第八条の三第三項の規定に違反した者
四 第十四条の三第一項若しくは第二項又は第十七条の三の二の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
五 第十四条の三の二の規定による点検記録を作成せず、虚偽の点検記録を作成し、又は点検記録を保存しなかった者
六 第十六条の二第三項の規定に違反した者
七 第十六条の五第二項の規定による消防吏員又は警察官の停止に従わず、又は提示の要求を拒んだ者
八 第八条第二項(第三十六条第一項において準用する場合を含む。)、第九条の三第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)、第十一条第六項、第十一条の四第一項、第十二条の六、第十二条の七第二項、第十三条第二項、第十七条の三の二又は第十七条の十四の規定による届出を怠つた者
九 第十三条の二第五項(第十七条の七第二項において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者
十 正当な理由がなく消防署、第十六条の三第二項の規定により市町村長の指定した場所、警察署又は海上警備救難機関に同条第一項の事態の発生について虚偽の通報をした者
十一 第八条の二の二第一項(第三十六条第一項において準用する場合を含む。)又は第十七条の三の三の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
十二 第十七条の四第一項又は第二項の規定による命令に違反して消防用設備等又は特殊消防用設備等の維持のため必要な措置をしなかった者
十三 第十八条第一項の規定に違反し、みだりに火災報知機、消火栓、消防の用に供する貯水施設又は消防の用に供する望楼若しくは警鐘台を使用し、又はその正当な使用を妨げた者
十四 第十八条第二項の規定に違反した者
十五 第二十一条第三項の規定による届出をしないで消防水利を使用不能の状態に置いた者
十六 第二十一条の十四第一項又は第二十一条の十六の七第一項の規定による報告を求められて、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
十七 第八条の二の二第四項(第八条の二の三第八項(第三十六条第一項において準用する場合を含む。)並びに第三十六条第一項及び第六項において準用する場合を含む。)及び第二十一条の十六の五の規定による命令に違反した者
十八 第二十二条第四項又は第二十三条の規定による制限に違反した者
十九 第二十三条の二の規定による火気の使用の禁止、退去の命令又は出入の禁止若しくは制限に従わなかった者
二十 正当な理由がなく消防署又は第二十四条(第三十六条第八項において準用する場合を含む。)の規定による市町村長の指定した場所に火災発生の虚偽の通報又は第二条第九項の傷病者に係る虚偽の通報をした者
二十一 第二十八条第一項又は第二項(第三十条の二及び第三十六条第八項において準用する場合を含む。)の規定による退去の命令又は出入の禁止若しくは制限に従わなかった者
二十二 第三十二条第一項(第三十五条の三第二項及び第三十五条の三の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による資料の提出又は報告を求められて、資料の提出をせず、虚偽の資料を提出し、報告をせず、又は虚偽の報告をした者
二十三 第三十三条の規定による火災後の被害状況の調査を拒んだ者
「電子政府の総合窓口e-Govより抜粋」 2020年4月17日現在

設置が義務付けられている消防設備

消防設備とは消防法及び関係政令で規定する、「消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設」 を指します。大きく分けると「消火設備、警報設備、避難設備、消防活動用設備」に分けられます。消防法で対象と定められている建物には、これらの消防設備が基準に従って設置されている必要があります。

消火設備

消火器、屋内・屋外消火栓設備、スプリンクラー設備、泡消火設備、ガス系消火設備、粉末消火設備など

警報設備

自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報設備、火災通報設備、非常警報器具および非常警報設備など

避難設備

避難器具(はしご・救助袋)、誘導灯および誘導標識、非常用照明など

消防活動用設備

排煙設備、連結送水管、無線通信補助設備など

点検・設置が義務付けられている建物(防火対象物)

下記に記した建物の用途や規模により、法で定められた基準に適合するよう設備を設置し、その設備を資格者等に点検をさせて維持管理し、定期的に消防長または消防署長へ結果を 報告する必要があります。なお、建物には用途により、「特定防火対象物」と「非特定防火対象物」があり、 特定防火対象物の関係者は消防設備点検の他に、施設の規模や構造等により「防 火対象物点検」も義務づけられます。

特定防火対象物(左端の表記は令別表第1の項番)

(1) イ

劇場、映画館、演芸場又は観覧場

(1) ロ

公会堂又は集会場

(2) イ

キャバレー、カフェー、ナイトクラブその他これらに類するもの

(2) ロ

遊技場又はダンスホール

(2) ハ

性風俗関連特殊営業を営む店舗その他これらに類するもの

(2) ニ

カラオケボックス等

(3) イ

待合、料理店の類

(3) ロ

飲食店

(4)

百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場

(5) イ

旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの

(6) イ

病院、診療所、助産所

(6) ロ

老人短期入所施設、特別養護老人ホーム、乳児院、知的障害者施設等

(6) ハ

老人デイサービスセンター、老人福祉センター、保育所、通所による障害者支援施設等

(6) ニ

幼稚園、特別支援学校

(9) イ

蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの

(16)イ

上記の特定用途を含む複合用途防火対象物

(16-2)

地下街

(16-3)

準地下街

非特定防火対象物(左端の表記は令別表第1の項番)

(5) ロ

寄宿舎、下宿、共同住宅

(7)

小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、大学、専修学校、各種学校の類

(8)

図書館、博物館、美術館の類

(9) ロ

特定防火対象物(9)項イ以外の公衆浴場

(10)

車輌の停車場、船舶、航空機の発着場(旅客の乗降・待合の用に供する建築物に限る)

(11)

神社、寺院、教会の類

(12)イ

工場、作業場

(12)ロ

映画スタジオ、テレビスタジオ

(13)イ

自動車車庫、駐車場

(13)ロ

飛行機又は回転翼航空機の格納庫

(14)

倉庫

(15)

上記『特定防火対象物』『非特定防火対象物』の用途に該当しない事業所

(16)ロ

特定防火対象物(16)イ 以外の防火対象物

(17)

重要文化財、重要有形民俗文化財、史跡、重要美術品として認定された建造物

点検期間

消防設備点検には、6ヶ月に1回行う機器点検と1年に1回行う総合点検があります。これらの点検は基本的に消防設備士または消防設備点検資格者が行い、総合点検の結果を特定防火対象物は1年に1回、非特定防火対象物は3年に1回、所轄の消防長または消防署長へ報告を行います。

6ヶ月に1回行う点検

機器点検(消防設備点検)

次の事項について、消防用設備等の種類に応じ、告示で定める基準に従い確認をします。
(1)消防用設備等に附置される非常電源(自家発電設備に限る。)又は動力消防ポンプの正常な作動
(2)消防用設備等の機器の適正な配置、損傷等の有無その他主として外観から判別できる事項
(3)消防用設備等の機能について、外観から又は簡易な操作により判別できる事項

1年に1回行う点検

総合点検(消防設備点検)

消防用設備機器の全部、あるいは一部を作動させて、総合的な機能を消防用設備の種類に応じて確認します。

防火対象物点検

消防法の基準に従って、火災や防災に対する備えや対策が行われているかを確認します。